愛知西教区青年僧の会『現地研修会』ご報告
3部 楽音寺 副住職 杉村陽介
3月9日(水)、静岡県の浜岡原子力館にて現地研修会を行いました。コロナ禍の影響により今回は日帰りでの開催となり、参加人数は7名でした。
テーマは『原子力発電を考える』であり、昨今カーボンニュートラルが叫ばれる社会の中で原子力発電の必要性や安全性を皆様に真剣に考えていただけたらという思いから、浜岡原子力館を選択させていただきました。
2011年の東日本大震災による福島原発の事故から、原子力発電所の安全性は絶対的なものではなくなり、太陽光、風、地熱など自然の力を利用した再生可能エネルギーへの転換が日本でも叫ばれてきました。しかし、自国でのエネルギー資源を持たない我が国にとってはその転換は容易なものではありません。たとえ、出来たとしてもコストや効率の面から我が国の経済力を低下させることは目にみえています。経済力の低下は生活水準の低下、ひいては健康で文化的な生活を送ることへの阻害要因となります。
我々人類、そして環境にとってのエネルギー政策の最善策が原子力発電ではないことは間違いないとは思いますが、今原子力を必要とする国々が多く存在することもまた事実であります。全世界が同じ方向を向いて脱炭素、カーボンニュートラルに向けて進んでいくことはもちろん大事であり理想であるとは思いますが、それが容易ではない国々もまた存在していることを今回の研修で学びました。
文明の発達した現在、心の豊かさは生活の便利さや物質的な豊かさと比例している部分があります。原子力発電というのは物質的豊かさを得るのには、様々なリスクが背景にあるのだということを学ばせてくれる例題の一つだと思います。
今回の研修では、わかっていたようでわかっていなかったことも多くありました。
原子力発電所は想像しているよりはるかに安全性に気をつけてつくられているということや、ウランもまた再利用して使える、再生可能エネルギーに近い代物であるということ。
我々は、カーボンニュートラルをただ叫ぶのではなく、今あるエネルギーとの付き合い方を真剣に考え、今後どうしていくかをまず考えることが大事なのだと思います。