開山無相大師さまの「ご遺誡」と開基花園法皇さまの「ご宸翰」の中から、三つの宗門の柱を見い出すことができます。

1、「汝等請う其の本を務めよ」(ご遺誡)

自己とは如何なるものか、と掘り下げ、心の奥底に真の自己を開発するこ とこそ、禅宗の基本の行であります。

2、「報恩謝徳の思い」(ご宸翰)

開基花園法皇さまは、大燈国師さま、開山無相大師さまのもとで、自己を 極めお悟りをお開きになられ、真の安心を得られました。その恩徳には身を 粉にしても報いたい、という熱い思いが、「ご宸翰」の中に切々と述べられ ております。

開山無相大師さまも「ご遺誠」で、「後昆直饒、老僧を忘却するの日あり とも、応燈二祖の深恩を忘却せば、老僧が児孫にあらず」とまでいわれてい ます。

作家吉川英治さんは、「我れ以外皆わが師」といわれました。あらゆる人々 に学ぼうという、極めて謙虚な気持ちが感じられます。恐らくこの言葉の背後に、自分を育ててくれたのは、人生で触れ会った人々、すべてだという、深い感恩の自覚があったと思うのであります。

3、「仏法興隆の志」(ご宸翰)

開基花園法皇さまは、真の心のよりどころを得られ、その喜びを多くの人々 にも体得して欲しい、と誓願されました。坐禅の修行により仏縁が結べるよ うに、という願いのもとに、私たちの妙心寺が建てられたのであります。